天皇や皇族関係者の催しが執り行われる際、よく皇族専用の車が使用されます。
それは通称「菊の自動車」とも呼ばれ、国賓や国会を訪問するなどの重要な公務を行う際に使われる車であり、御料車(ごりょうしゃ)と呼ばれています。
この御料車には、よく知る一般的なナンバープレートがついていません。
近年、新天皇誕生の祝賀パーティーの際には、その車について疑問に思った方がネット上に多く投稿、Twitterで話題になりました。
一体なぜ、天皇の車にはナンバープレートがないのでしょうか。
その御料車のヒミツについて、深掘りしてみようと思います。
Contents
【御料車】天皇の車にはナンバープレートがついていない?
一般的なナンバープレートは、四角いもので車の前方と後方についています。
しかし、上皇様が乗車していた御料車には、見慣れたプレートがありませんでした。
皇族の特別使用車だからついていないのかな?
と、思う方も多いと思われますが、実はよく見てみると、車の前方に銀色の円形のプレートがついています(後述)。
これは、「皇ナンバー」と呼ばれていて、皇族専用のナンバープレートとのこと。
一般的なものとは違いますが、きちんとナンバープレートがついているんです。
ナンバープレートは専用のものですが、登録上は自家用車になるそうで、車検が必要であるのはもちろん、自動車検査証、自賠責保険、自動車重量税や自動車税も一般車と同一に適用されます。
では、その皇ナンバーについて、詳しく見ていきましょう。
皇ナンバーとは?番号の意味について
皇族専用のナンバープレートである「皇ナンバー」は、直径100㎜の金銀配色の円形に、「皇3」「皇5」というような二文字が縦に表示されています。
ナンバーは、
「皇1」「皇2」「皇3」「皇5」「皇10」
とあり、それぞれによって意味が異なります。
皇1:天皇皇后専用車(標準仕様)
皇2:霊柩車(寝台仕様)
皇3:国賓接遇車(防弾仕様)
皇5:国賓接遇車(防弾仕様)
皇10:パレード用のセンチュリーロイヤル(特別仕様)
上記の内容の通り、皇ナンバーにより、御料車の役割が異なってくるんですね!
なお、「皇4」は、欠番でナンバーは存在しません。
数字の4は、「忌み数」と言われ縁起が悪いとされているからだそうで、一般車両のナンバーでも「4219」や「4242」は発行されないそうです。
そういえば・・・確かに、あまり見たことがないような。
【御料車】天皇の車にはどんな種類があるのか
では実際に、どのような種類の御料車があるのか、そちらが気になりますよね!
御料車と呼ばれる車は10台あり、そのうち特別な儀式などでは、トヨタのセンチュリーを改良した「センチュリーロイヤル」と呼ばれる車両が使用されています。
https://t.co/mgTOVdD79u
宮内庁は、22日に予定されている「#即位の礼」のパレードで天皇、皇后両陛下が乗車されるオープンカーを報道公開しました。トヨタの高級車「センチュリー」を改造したもので、「皇10」のナンバーがつけられました。当日はボンネットに天皇旗が立てられます。(志) pic.twitter.com/Qnn99RCv97— 朝日新聞 映像報道部 (@asahi_photo) October 7, 2019
銀の皇ナンバーが光り、とても厳かな御料車ですね。
御料車が導入されたのは1912年(大正元年)であり、それまでは馬車だったとのこと。
なんとも歴史を感じさせますね!
そこで、1912年以降の歴代の御料車はどんな車だったのか調べてみました。
【デイムラー・ランドレー57.2HP】
初代の御料車は、1912年(大正元年)の大正天皇の即位の時に、日英同盟を結んでいたイギリスから輸入された「デイムラー・ランドレー57.2HP」
デイムラーはイギリス王室で初めて御料車に採用された車としても有名ですね。
当時日本に導入されたデイムラーは、皇室の色である溜色に塗装され菊の御紋がドアにつけられました。
それ以外は特別な装備はなく、一般に使われていた自動車との違いはほとんどありません。
こちらの御料車は、1927年まで使用されました。
【ロールス・ロイス・シルヴァーゴースト】
次に御料車として輸入されたのは、1921年(大正10年)に導入された「ロールス・ロイス・シルヴァーゴースト」。
フーパー製リムジンボディで1936年(昭和11年)まで使用されました。
当時は2台輸入されたのですが、残念ながらそのうちの1台は1923年(大正12年)に起きた「虎ノ門事件」と呼ばれている暗殺未遂事件で被災してしまっています。
それまで、防弾装備をしていなかった御料車は、この事件をきっかけに防弾装備の充実が必要になり次の御料車では防弾装備が実装されました。
役目を終えた、この御料車は廃棄後、車体は解体され、エンジンは吹上御所内の緊急用井戸のくみ上げポンプの動力として使用されたという逸話があります。
【メルセデス・ベンツ・770】
1932年(昭和7年)に導入されたのが、メルセデス・ベンツ・770。
7台のうち2台は、先代の御料車とは違い防弾装甲のボディに改装し、重量は4トンを超え特殊なイヤが使用されました。
このうち一台は戦時中に焼失してしまいましたが、他の御料車は戦後間もない頃の「巡幸」で使用され、昭和天皇を乗せて全国を回っています。
そしてこの御料車は、1968年(昭和43年)までの長い年月を使用されました。
1971年(昭和46年)に1台がダイムラー・ベンツに寄贈され、現在はドイツにある「メルセデス・ベンツ博物館」でその姿を見ることができます。
【キャデラック・75リムジン】
1951年(昭和26年)には、キャデラック・75リムジンが導入。
太平洋戦争終結後の日本は、アメリカをはじめとする連合国占領下にあり、長年使われていたメルセデスベンツの代わりに採用されたのが米国産のこの車両でした。
ですが、当時「メルセデス・ベンツ770」も使用され続けてたことや、正式には御料車とはなっていなかったロールスロイス製「シルバーレイス」と「ファントム5(ファイブ)」も使用されていたことで、使用期間は19年と他の御料車に比べて短く引退を迎えています。
【日産・プリンスロイヤル】
1967年(昭和42年)には、初の日本製御料車が導入されました。
ほぼ手作りに近い品質管理が行われ、内装も西陣織をふんだんに使用するなど最高品質を追求。
のちに日産自動車に合併される「プリンス自動車工業」が製造しています。
7台が作られ、うち1台はのちに寝台車に改造されて昭和天皇の大喪の礼で使用されました。
一般的には販売されず、皇室の御料車の7台のみ製造されています。
約37年間使用され、「英国エリザベス女王」、「インドネシア大統領スカルノ」、「米国大統領ロナルド・レーガン」を始めとする世界各国の要人を乗車させたことでも知られています。
2004年に、経年劣化が進み部品の調達が難しくなったことなどを受け、新しい御料車の導入に合わせて引退しました。
現在、3号車が昭和天皇記念館に展示されています。
【トヨタ・センチュリーロイヤル】
2006年(平成118年)に導入されたのがトヨタ・センチュリーロイヤルです。
2代目センチュリーをベースに皇室用に特殊装備を施し、内装は和紙や天然木、座席には毛織物、そして乗降ステップには御影石を使用。
自然素材を使った特別な内装に仕上がっている事でも有名です。
また、天皇陛下の想いにより、窓枠の高さなどが工夫されています。
翌2007年には防弾性能を強化した「特装車両」も2台納入され、当時の中国「胡錦涛国家主席」が来日した際に使用されました。
初のトヨタ製の御料車は、通常車両1台、特装車両2台、寝台車両1台の計4台が宮内庁に納入されています。
そして、2019年(令和元年)に、導入されたトヨタ・センチュリーロイヤル。
第126代天皇徳仁様の即位の礼・祝賀御列の儀に使用するために、コーニッシュIIIの代替車として3代目をベースとした、特別仕様のオープンカーとなっています。
パレードとその他の式典で使用された後は、「皇10」のナンバープレートと菊の御紋が取り外され、今後は2020年の東京オリンピックのパレードなどに利用される予定となっています。
【御料車まとめ】天皇の車のナンバープレート・皇ナンバーの意味について
以上、天皇陛下、上皇后様がご乗車されていた車について深掘りし、御料車のナンバープレートや皇ナンバーの意味について調べて結果となります。
形は違いますが、一般車両と同じくナンバープレートは存在し、そしてやはり特別な仕様となっていました。
そして、特別なのはナンバープレートだけではなく、内装や外装も貴重な素材で作られ、尚且つ安全性が完備された仕様となっておりました。
天皇陛下や皇族関係者、そして国賓を乗せる御料車ですので、一般的な車両と違って当たり前ですが、それにしても豪華すぎます笑
馬車から自動車に代わり、その時代の産業や国際事情の影響を受け選ばれて来た御料車。
今後はどんな車両が導入され、どのような仕様のものになるのか・・・興味が尽きませんね。
>>>【天皇の苗字】免許証・パスポートの記載は?戸籍はあるの?
>>>【学習院】皇族はなぜいく?皇族離れの原因は警備や偏差値が関係してるのか考察